データサイエンスビジネス現場テクニック

AI導入、データ活用についての事例【2020秋Webセミナー内容まとめ】

データサイエンス

昨年の秋頃に行われた食品・製造業界におけるAIやデータのビジネス活用事例(webセミナー)のメモが出てきたので、これを取り上げたいと思います。

今回のポイントは

経営層と現場の理解という壁を意識して突破しないと、いくら良い分析やモデルができても実行するのは難しい。

ということが色濃く表れていると思います。

 

キューピーのAI事例

課題設定

「理念に基づく課題」×「協力会社の課題」×「同業他社の課題」
この3つが重なる部分が原料の検査精度向上(=業界共通の課題)だった。

やはり目的を明確にすることは大事ですね。一体、何がコアな課題なのかをしっかりと議論した結果だと思います。

AI活用の中身

・検査にかかるコスト削減にAI活用
=画像を使って判別:問題ない原料(切ったじゃがいも)の画像を教師データにする
※不良品のアノテーションは行わなかった

アノテーションとは、機械学習の教師データを作ることです。いわばお手本を作ることで、今回は不良品を検知するために不良品を教師データにするのではなく、良品を教師データにしたということです。

 

・良品(黒ずみがない角切りポテト)の画像と分類モデルはクラウドに保管&他でも活用
→モデルの更新は原料により行うが、アルゴリズムは変えないでいる。

・キューピーは装置販売での利益追求はしない
「AIは、技術でなくイノベーション。明確なゴール=「志」を定め、強いコア(現場力)をかけ合わせ、覚悟を持って実行する」(※「志」:利他的な目的を持つ心)

だいたい、ツールとして出来上がりそうなら「ツールの横展開」を考えますが、その方針は取らないようです。

 

質疑

Q:現場の方に、AIに仕事が奪われると思われないか?
A:検査はあまりやりたくない仕事なので、むしろ助かるという声があがる。

メリットを強調できたのは、現場の方のニーズをしっかりと正確に把握できていたからだと思います。従業員から日頃から情報を吸い上げることは、こういったときに活用できますね。

 

発表者より最後に

PJを推進させるためには、経営者の理解を得ることが大事。

やはりビジネスでデータを活用するとなると、単に分析担当=データサイエンティストだけがプレイヤーではない、こいうことが強く表れています。

 

 

コニカミノルタのデータ活用事例

データドリブンPLMの取り組みについて

・コニカミノルタの目指す姿「課題提起型デジタルカンパニー」
・データサイエンスの取り組み
ヒト行動、先端技術、製造支援(工場のデータ)を活用(今で言うDX)
PLM:サプライチェーンとプロダクトチェーンを総合してマネジメント
調達→製造→物流→販売→サービスの各オペレーションが個別なのでデータでつなぐ

典型的な探索型データサイエンス案件にカテゴライズされる内容です。データを横串にして、新たな知見を発見し、効率化につなげようというものです。

 

 

推進メンバーの体制・進め方

①推進リーダー ②分析プロフェッショナル ③ITエンジニア
現場メンバーからやりたいことを吸い上げる

PM(プロジェクトマネージャー)を立て、俯瞰的に見る立場を置くことは重要です。プレイヤーの誰かが兼任するPJもあると思いますが、やはりバイアスを避けるためにも別に立ててほしいところですね。

 

そして進め方について非常に実務的でした。

「こうすればコスト削減できる」というアプローチではうまくいかない(仕事が奪われると思われてしまう)

進捗をPJメンバー以外の関係者にも共有し、意見を吸い上げていたことが分かります。ここの内容は完全にデータサイエンスの範疇ではありませんが、ビジネスで活かそうとなると必ず配慮しないといけない部分で、『誰かのベネフィットを奪うような表現は絶対に避けるべし』ということです。最近見た韓国ドラマでも、「自動化AIの導入を拒む従業員のデモ、そのリーダーが主人公の父親で…」というシチュエーションがありましたが、これはドラマの世界だけの話ではなくなってくるでしょう。

 

現状

・マーケティングの需要予測は自動で分析、レポーティングする仕組みにしている。
生産現場のデータ活用→要因分析→レポーティング
・現場のやりたいことは「効果:大 難易度:難」が多いが、「効果:大 難易度:易」からまず探して取り組む。

ある程度形になれば自動化できますが、すると次々に調査対象が表れてきます。そうなると優先順位を付けなければなりませんが、その順位付けには答えがあります。やはりスピード感をもって、フィードバックから改善を回していくことが大事ですね。

 

 

実施に際して

根拠を示す…これまでも同夜の取り組みをしてきたが、今回はなぜ上手く行くのか?を示す。その際、過去の取り組みを否定しない。
「いままではこういうふうだったが、今回は新たにこういうデータを使うので、上手くいく可能性が高いです」

日常でも思いますが、いつも排他的だと可能性を見落とすことが多いです。単に、『その時のデータでは可能性が薄かった部分が、後々正解だった』ということもあります。(ベイズ確率の例でよくある沈没船探索の経過に似ている)

そしてやはり、表現方法ですね。少しの可能性のものを否定するのではなく、少しでも可能性が高くなったことについて言及したほうが、モチベーションも上がります。

 

質疑

Q:機械学習のモデル評価はどのように行っていた?
A:機械学習モデルの精度評価としては、モデルそのものよりも結果コスト削減できるのかどうかを重要視していた。3ヶ月で出来る限りのモデルを作成することにして、精度の深追いはしない。

ここでもスピード感、ですね。このあたりが、学問としてのデータサイエンスとビジネスデータサイエンスの決定的な違い、でしょう。

 

 

まとめ

今回のポイントは

経営層と現場の理解という壁を意識して突破しないと、いくら良い分析やモデルができても実行するのは難しい。

でしょうか。「いかに上手に分析するか」よりも、「いかに現場で実現させるか」という意識をもってスタートしないと、おかしな方向へ進んで結果失敗…になりかねないですね。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました