『弁護士ドットコム』について
・時価総額は2800億円、創業16年のIT企業 内田社長(2017年~)【経歴】三菱商事→半年後ベンチャーキャピタル(価格ドットコム)
税理士ドットコム、クラウドサインも運用
『税理士ドットコム』もあるみたいですね。
法律相談と登録弁護士
(例)「コロナが原因で結婚式の2次会を延期したいが、空いている日程がない。キャンセエル料を払いたくない」という顧客について弁護士ドットコムで相談
【弁護士の回答】コロナは天変地異といった類にあたらないため、キャンセル料は必要
【結果】別の会場を用意することで和解
『弁護士ドットコム』には弁護士の依頼者レビューもあり、利用者からは「身近に感じられる」と評判が高いサイトになっているようです。
ところで、日本の法律トラブルと法律相談数(の母数?)は次の通りだそうです。
法律トラブルは年間1600万件、うち弁護士に相談されるのは2割
恐らく想像していた法律トラブル数が多かったのではないでしょうか?
そして、弁護士ドットコムに登録している『登録弁護士』数は次のような感じらしいです。
弁護士ドットコムは日本の弁護士4.2万人中、その半数が登録している。
企業案件専門の弁護士も多数存在するため、個人案件を扱う弁護士の利用割合はかなり高そうです。
『弁護士ドットコム』の人気コンテンツ
最も利用されるのは「みんなの法律相談」という、『匿名で相談投稿可、複数の弁護士が回答』なコンテンツのようです。利用料は、PC無料・スマホは月300円のサブスクリプションになっています。
ここで、また別の法律相談例の紹介がありました。
(例)離婚した元夫のもとを離れたが、電気代の請求先は自分(妻)のクレジットカードになっており、督促状が届いた。元夫に請求できるか?
【弁護士の回答】不可。妻がクレジットカードの名義人であるため、責任は免れない。
これに回答した弁護士は、過去『みんなの法律相談』に4,000件ほど無料回答を行っていたそうです。そして、仕事の7割はこのサイトから得ているとのこと。
ここで登録弁護士の弁護士ドットコム利用料金の紹介がありましたが、弁護士の利用料は「無料」または「2万~5万のプラン」があるようです。
続いて、利用者の声の紹介がありました。
某住職「数年に渡るネットの誹謗中傷で困っていた。相談を行ったところ『賠償金は最大50万が見込まれるが、弁護士費用の方が高い』とのことだったが、これを事前に弁護士の先生から教えていただいたことで、むしろ安心感があった。」
普通、『法律事務所に相談』となると敷居が高く感じて、手頃感はありませんよね。でも、いざ相談してみると「意外と親身に話を聞いてくれた」といった感想になりがちだと思います。その敷居の高さ=心理的距離感のようなものを、インターネットサービス(IT)という形で取り払った、という形になっていると思います。番組内では『市民を助けるプラットフォーム』と称されていました。
結果、みんなの法律相談には累計100万件の法律相談にのぼるそうです。
立ち上げ当時の苦労と強い信念
社長曰く、「以前は弁護士が広告を打つことは禁止されていたが、解禁された。そういった中で最も手軽にインターネットを利用して自分の紹介をネット上でできる、という点が強み」ということで、これは初めて知りました。広告解禁のタイミングで『インターネットコンテンツに注力することを選択した』というのが今日の成功につながっているんだろうと思います。
しかし、最初から順風満帆だったわけではなく、「最初は登録弁護士が少なく、弁護士事務所をまわって説得する日々だった」ということで、当時(今でもこういう方が多いと思いますが)「ネットは信用できない」と相手にされないことが多かったようです。大量にFAXを送って説明会を開いても、来た弁護士は一人…というときもあったらしいですが、それでもサービスの普及、あるべき未来を信じて事業活動を続けてきた、という部分はまさに理想的ですね。
また、「法律トラブルは放っとくと深刻化する。法律トラブルも予防が必要」ともおっしゃっており(『予防法務』というらしい)その分野の情報収集、洞察の結果も伴っていると思いました。
そこへ、価格ドットコムのモデルを照らし合わせて「弁護士をインターネットで比較検討できたり気軽に相談できたら便利なんじゃないか」という当時の社長のアイデアから、今日に至るようです。
クラウドサインの普及戦略と狙う社会的役割
現在、注力している新事業『クラウドサイン』(電子契約サービス)は月額1万円から、契約書送信1通200円という料金体系で徐々に利用者を伸ばしています。
(例)某産廃処理業者は事前に契約書発行必須=契約書が凄まじい量(月に500通、大きいバインダーが年間70~80冊)で年々溜まっていく&最低5年保存義務
【クラウドサイン導入後】1年で100万円のコストカット
利用者「契約書を交わすというのは行為でしかないので便利」という声がありながらも、取引先が切り替えないとできない(現状2割ほど)ということで現在普及活動に精を出している段階です。
社長曰く「現在14万社を超えたが、かなりの赤字。先行投資を進めており、サービス開発と広告宣伝にかなりの費用をかけている」また、「弁護士ドットコムが運営しているので安心感もあるのかと思われる」「ハンコは簡単で良いルールでなくさなくて良いが、契約で毎回同じというは合理的ではないのでは?」と、次代の流れもありこれから普及が期待されます。
プロモーションについては、Yahoo!ニューストップに記事を載せPRするため、社内に編集部もあるよです。メンバーは元スポーツ新聞記者などで、「コロナによる内定切りは解雇にあたる」といったニュースが掲載された例があります。
最後に、内田社長は次のように話されていました。
【考察】価格ドットコムのモデルで試行の限界を超えた好例
今回、強く感じたのは『ベネフィットを確実にとらえて離さなかった』という部分と『価格ドットコムのモデルに未来への道筋を描いた』という点です。
まず『ベネフィットを確実にとらえて離さなかった』という部分については、これは統計データで見えるようなものではありませんが、様々な企業の声を聞いてきた結果、カンと経験による推論が高精度にまで高まった結果、間違いのないレベルにまで昇華したのだと感じました。
次に『価格ドットコムのモデルに未来への道筋を描いた』という点です。当然ながら、新規サービスにおいては、当然ながら過去のデータがあるはずもなく、分析のしようもないです。しかし、ITサービスという分野で周りを見たときに、当時はまだデータとしては存在しない顧客像を想定できていた、という点がまさに「見える範囲=限界を超えた」好例だと思いました。
あと、余談ですが
法律トラブルは年間1600万件、うち弁護士に相談されるのは2割
というのは驚きでしたね。法律トラブルというのは自分の身にそうそう降りかかるものではないので、「じゃあ国内でどれくらい起きている?」となると、まさにデータに頼らざるを得ない集計=なんとなくの数値感覚だと大やけどする類ですね。
【大やけどしないためのオススメ書籍】
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