データサイエンスビジネス

現場で使いやすい時系列データ分析手法

データサイエンス

この記事では、時系列データ分析手法について分かりやすく解説し、学生やビジネスパーソン向けにその重要性と活用方法を解説します。

時系列データ分析の概要とビジネスへの重要性

時系列データ分析とは、時間に沿って記録されたデータを扱う統計的手法のことです。例えば、過去の売上データ、株価の推移、気象データなどが時系列データの一例です。これらのデータは通常、連続的な時間間隔で記録されており、時間の因果関係を理解することが重要です。

ビジネスにおいては、過去のデータから未来を予測し、戦略を立てることが求められます。時系列データ分析は、過去のトレンドや季節性を把握し、将来の需要予測やリスク管理に活用されます。

例えば、小売業では売上予測を行い、適切な在庫管理を行うために時系列データ分析が用いられます。また、金融業界では株価の予測やリスク評価に応用され、適切な投資戦略を立てるために重要な手法となっています。

 

時系列データ分析手法とビジネス活用

時系列データ分析にはさまざまな手法がありますが、ここでは代表的な手法としてSARIMA、SARIMAX、Prophetについて解説します。

 

SARIMA(Seasonal Autoregressive Integrated Moving Average)

SARIMAは季節性を持つ時系列データの予測に用いられる手法です。季節性やトレンド、残差などの要素を考慮してデータをモデル化し、将来の値を予測します。

SARIMAモデルは次の3つの要素から構成されます:

  • 自己回帰(AR): 過去の値が未来の値に影響を与えるという仮定に基づいて、現在の値を過去の値の組み合わせで表現します。
  • 積分(I): 時系列データが非定常的である場合、差分をとることによって定常性を持たせます。
  • 移動平均(MA): 誤差項が過去の誤差項に影響を受けるという仮定に基づいて、現在の誤差項を過去の誤差項の組み合わせで表現します。

【具体例1】 飲料メーカーAは、季節的な需要変動が激しい商品を製造しています。季節ごとに需要の増減があるため、需要予測が課題でした。SARIMAを用いて過去3年間の売上データを分析し、来年の需要を予測しました。その結果、夏季に需要が急激に上昇することが分かり、在庫を適切に調整することで売上を最大化することができました。

 

SARIMAX(Seasonal Autoregressive Integrated Moving Average with Exogenous Variables)

SARIMAXはSARIMAに外部の影響要因(exogenous variables)を組み込んだ手法です。例えば、売上データに気温やイベントの情報を加えることで、気象やイベントが売上に与える影響を考慮しながら需要予測を行うことができます。

 

【具体例2】 小売業者Bは、売上を向上させるために新しい販売キャンペーンを計画しています。SARIMAXを用いて過去の売上データと気温データを分析し、気温が売上に与える影響を把握しました。その結果、特に気温の高い日に売上が増加する傾向があることが分かりました。B社はこれを踏まえて、暑い日に特別なプロモーションを実施し、売上を向上させることができました。

 

Prophet

ProphetはFacebook(現:Meta社)によって開発されたオープンソースの時系列データ分析ツールです。簡単に使えることが特長であり、トレンドや季節性を柔軟にモデル化することができます。ビジネスにおいては、予測モデルを構築する際にProphetを用いることで、迅速に精度の高い予測を行うことができます。

Prophetは以下のような特長を持ちます:

  • 季節性のモデル化: 曜日、月、年の季節性を柔軟に扱えるため、季節的なトレンドを的確に捉えることができます。
  • 祝日の考慮: 祝日などの特別な日を考慮することで、予測精度を向上させます。
  • 自動アウトライア検知: 突発的なイベントによる外れ値を自動的に検知し、除外することでモデルの安定性を向上させます。

【具体例3】 小売業者Cは、新製品の売上を予測するためにProphetを利用しました。過去の似た製品の売上データと広告費用データを入力し、未来の売上を予測するモデルを構築しました。このモデルによって、新製品の売上が一定期間後に上昇することが予測されました。C社はこれを踏まえて、適切な時期に広告を強化することで売上を最大化しました。

 

実務で活用するにあたって

時系列データ分析はビジネスにおいて非常に重要な手法ですが、データの収集や前処理の工程が非常に重要です。データの欠損や外れ値を適切に処理することで、モデルの精度を高めることができます。

また、時系列データの特性を理解し、適切な手法を選択することも重要です。ビジネスのニーズやデータの特性に合わせて適切な手法を選択し、時系列データ分析を活用して効果的な意思決定を行いましょう。

 

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【参考文献】

  1. Hyndman, R.J., & Athanasopoulos, G. (2018). “Forecasting: principles and practice”. OTexts: Melbourne, Australia. https://otexts.com/fpp2/
  2. Taylor, S.J., & Letham, B. (2018). “Forecasting at scale”. American Statistical Association. https://peerj.com/preprints/3190/

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